劣化別外壁のメンテナンス方法について

金属サイディング

外壁の劣化症状は、素材や築年数、環境によって違っており、そのメンテナンス方法も変わってきます。

劣化症状は、外壁素材1つをとっても数種類あり、そのタイミングによって施すメンテナンス方法も変わってくるのです。

今回は、劣化症状別にみる外壁のメンテナンス方法についてご説明いたします。

 

◆外壁素材の種類について

外壁の劣化症状は、使われている素材によって変わってきます。そこで、まずは外壁素材にはどのような種類があるかについて見ていきましょう。

◎サイディング

建物の外壁に貼り付ける仕上げ板のことで、レンガ模様や木目模様などがデザインされたボードを貼り付けていきます。多くの住宅に利用されている素材です。

サイディングには、主に窯業(窯にて高熱処理をすること)系・金属系・樹脂系の3種類があり、耐久年数は窯業系が約7年~8年、金属系が約10年~15年、樹脂系が約10年~20年となっています。

◎ALC

「Autoclaved Lightweight aerated Concrete」の略で、高温高圧多湿養生処理された軽量気泡コンクリートのことです。主成分は、セメント・珪石・消石灰・石膏・アルミニウム粉末などです。

ALCは非常に軽量であり、その重量は一般的なコンクリートのおよそ4分の1程度しかありません。それでいて耐火性・断熱性・耐久性に優れ、耐久年数は約10年~15年となっています。

◎タイル

耐久性・耐火性・耐腐食性に優れ、色褪せや大きな劣化は少ないです。耐久性は10年~15年ですが、それ以上のものもあります。

◎レンガ

ヨーロッパ諸国などでは古来より建物の資材として利用されているレンガは、耐久性・耐熱性・耐候性に大変優れており、メンテナンスもほとんど必要としません。

◎コンクリート

セメントに砂利と砂を混ぜ合わせたもので、住宅の基礎部分にも利用されています。強度は十分にありますが、年数が経過すると防水効果が低下しひび割れなどの劣化が起こります。

◎漆喰

消石灰に海藻のり・すさ(藁・麻などを細かくしたつなぎ)などを混ぜ合わせたもので、防火性・調湿性に優れており基本的にメンテナンスは必要ありません。

 

◆外壁に起こる劣化症状とは?

外壁に起こる劣化症状は、多種多様な素材がある分、その数も数十種類に及びます。

ここでは、外壁に起こる主な劣化症状と、起こりやすい外壁素材をご紹介します。

*傷や亀裂が生じる(金属系サイディング)

金属系サイディングは、アルミやスチールが原料となっている金属鋼板で、涼しげでスタイリッシュな印象の家になります。ただし、壁に硬いものをぶつけてしまうと傷が付きやすく、場合によっては目立ってしまうこともあります。

*錆びる(金属系サイディング)

日々浴びる紫外線や、雨・雪などによってコーティングが剥がれ、金属部分が露出すると錆が発生することがあります。錆を放置すると、金属の腐食が進み、強度が落ちてしまいます。

*変色する(金属系サイディング・樹脂系サイディング・ALC・コンクリート)

紫外線の影響が大きく、特に日当たりの良い外壁の色は、色褪せたり変色することがあります。樹脂系などでは褐色することが多いです。

*弾力性がなくなる(樹脂系サイディング)

樹脂系サイディングは、弾力性が強く衝撃に強い外壁材ですが、紫外線の影響を受けやすく、築年数が経過するほど硬くなって弾力性が失われてきます。

*もろくなる(樹脂系サイディング・コンクリート)

樹脂系サイディングは、紫外線の影響によって弾力性を失うと素材がもろくなってきます。また、コンクリートは、表面に施されている防水処理が低下してくるとひび割れなどを起こし、内部に水分が侵入しやすくなります。これが原因で耐久性が落ち、もろくなりやすいです。

*シーリング剤の劣化(窯業系サイディング・ALC・タイル)

シーリング剤とは、サイディングボード同志をつなぎ止める接着剤のことで、年数の経過とともに痩せてきたり、亀裂が入るなどの劣化が起こってきます。そのため、定期的なメンテナンスが必要です。

*チョーキング(窯業系サイディング・ALC)

外壁に表面に施されている樹脂コーティングが外部刺激(紫外線・熱・風・雨など)に剥がれ、白亜化(はくあか)を引き起こします。壁を手で触ると白くなることがありますが、これがチョーキングです。

*爆裂症状(窯業系サイディング・ALC・コンクリート)

特にコンクリートで起こりやすく、ひび割れが生じた部分から水が侵入して鉄筋を錆びつかせ、それによって鉄金部分が膨張し、外壁を浮かしたり破壊・破裂させる症状です。

*凍害症状(窯業系サイディング・ALC・コンクリート)

凍害は、劣化などで素材の内部に水分が侵入して凍結・融解をくり返すことで、素材が劣化する症状です。主に寒い地域のコンクリートや窯業系サイディングなどで起こりやすいです。

*クラック(ALC・コンクリート・漆喰)

クラックとはひび割れのことで、外部刺激によって素材が劣化することで現れます。主にコンクリートや漆喰などで起こります。

*コケ・カビが生える(ALC・コンクリート)

日当たりが良くない場所の外壁では、雨などによって付着した水分が蒸発せず、残ることによってコケが生えたり、カビが発生することもあります。

*内部の鉄筋の腐食(コンクリート)

コンクリートでは、強度を増すために鉄筋を入れますが、表面が劣化したことでひび割れが起こり、そこから水分が侵入することで内部の鉄筋を腐食させます。鉄筋が腐食してもろくなると、コンクリート自体の強度も低下してしまいます。

*塗料・塗膜の剥離(ALCなど)

天候や紫外線などによって表面の塗料や塗膜が劣化すると、密着性が低下します。それが原因で、塗料が剥がれてしまいます。

*割れ・欠け(タイル・レンガ)

タイルやレンガ自体の耐久性は高いですが、何らかの衝撃を受けることでひび割れが起こり、それが原因で割れ・欠けが生じる場合があります。

*剥がれ落ちる(タイル・レンガ)

タイルやレンガを貼るためのモルタル(セメントに砂を混ぜたもの)が劣化することによって、剥がれ落ちる場合があります。

*汚れ(コンクリート・漆喰)

常に外気にさらされている部分であるため、泥や排気ガス、ほこりなどが付着しやすいです。

 

◆劣化症状別のメンテナンス方法

外壁のメンテナンスは、使われている素材とその劣化症状によって、施す処置方法も違ってきます。

そのため、外壁の素材ごと劣化症状に合わせたメンテナンスが必要となってきます。

そこで、劣化症状別のメンテナンス方法をご紹介します。

*傷や亀裂の場合

それほど大きな傷や亀裂でなければ、補修塗料による塗装をすることで改善することが可能です。しかし、塗装では改善できない場合には、一部の金属系サイディングボードを張り替える必要があります。

外壁の汚れを落とし、乾いてから補修塗料で塗装を行います。傷のある部分だけでなく、全塗装することで耐久性を高められます。

※高圧洗浄は亀裂を悪化させる可能性があるため行いません。

*錆の場合

スチールやアルミからできている金属系サイディングも、純度が100%でないと錆が生じることがあります。このメンテナンスでは、錆が生じた部分を研磨紙や金ブラシなどでキレイに取り除き、防腐塗料を塗ってから塗装を施していきます。

*変色の場合

洗浄にキレイになる場合もありますが、落ちない場合には再塗装をすることになります。

*シーリング(コーキング)材劣化の場合

新築から約5年経過した頃から、シーリング剤が劣化してきます。このメンテナンスでは、劣化したシーリングを全て取り除き、新しいシーリング剤を充填していきます。

*チョーキング発生の場合

塗り替え(再塗装)によるメンテナンスを行います。

外壁全体を高圧洗浄し、その上から新しい塗料を塗っていきます。

塗料の種類は、耐久性が低い順にウレタン塗料・シリコン塗料・フッ素塗料・機能性塗料(光触媒など)があり、できればシリコン塗料以上のものを選ぶと、メンテナンス期間が長いのでおすすめです。

*爆裂症状の場合

爆裂がどの部分で起こっているかを、専門家が目視と打診によってチェックします。腐食が起こっている部分までコンクリートをはつり(削り)、鉄筋の錆を落として防錆処理を施します。その後、樹脂入りのモルタルで補修します。

*凍害症状の場合

凍害症状のレベルにもよりますが、塗装が剥がれた程度であれば再塗装でメンテナンスができます。(浮きが生じている場合には、コーキング剤を内部に注入します)

症状が酷い場合には、サイディングボードを取り替える場合もあります。

*クラックの場合

クラックが起きた外壁素材にもよりますが、可能であればクラックが起こった部分の素材を、新しいものに取り替えるのが効果的です。しかし、コンクリートなどでは取り替えることができないため、ひび割れ部分に表面皮膜材や目地材などを注入する方法が用いられます。

クラックが起こった原因(内部の腐食によるもの・表面の小さなひび割れによるものなど)によってもメンテナンス方法が多少異なりますが、小さなひび割れが原因で内部の鉄筋に影響がない場合には、この方法で処置が可能です。

*コケ・カビの場合

高圧洗浄の後、塗装しなおすことでメンテナンスができます。塗装方法は、チョーキングのメンテナンス方法と同じです。

*鉄筋の腐食の場合

そのままにしておくと腐食が進行してしまうため、鉄筋の腐食が起こっている部分までコンクリートをはつり、メンテナンスを行います、

鉄筋の錆をキレイに落とし、防錆処理を施します。その後、ポリマー入りのセメントで修復していきます。

*塗料・塗膜の剥離の場合

チョーキングと同じ、塗り替えのメンテナンスを行います。

*割れ・欠けの場合

タイルやレンガが割れてしまった場合には、その部分を取り除いて新しいものに取り替えます。

割れている部分のタイル・レンガとその下地を取り除き、再び下地を充填して新しいものを貼り替えます。

*剥離の場合

剥離の場合は、接着剤となるモルタルやシーリング材が劣化して起こるため、一度シーリングを取り除き、再び新しいシーリング材を充填して貼り替えるのが効果的です。タイルに問題がなければ再利用も可能です。

*汚れの場合

外壁に付いた様々な汚れを落とすには、市販されている外壁用クリーナー、もしくは中性洗剤を使って洗い流す方法が効果的です。

予め、砂埃などの汚れを水で落としておきます。スポンジに洗剤をふくませてやさしく洗い、最後にしっかりと洗剤を落とします。

洗剤にはアルカリ性や酸性のものもありますが、これらは外壁にダメージを与えるので避けるようにしましょう。

汚れが酷い場合や範囲が大きい場合には、高圧洗浄がおすすめです。

 

◆まとめ

外壁のメンテナンスは、使われている素材にどのような劣化症状を起こっているのかを把握し、それに合ったメンテナンス方法を行うことが最も大切です。